在日コリアンの相続 その1 準拠法

 大阪には、いわゆる「在日コリアン」と呼ばれる、朝鮮半島にルーツを持つ方が多く生活されています。当然、在日コリアンの方が亡くなれば、日本人の方と同様に相続が発生するのですが、その際に日本人と異なる点はあるのでしょうか。

 

 まず、「準拠法」、つまり、どの国の法律によって相続が行われるか、という問題があります。法の適用に関する通則法36条は、「相続は、被相続人の本国法による。」と定めていますので、亡くなられた在日コリアンの方が日本国籍を取得していれば日本の民法が、韓国籍の方は韓国の民法が相続のルールになります。

 

 なお、在日コリアンの方が「朝鮮」籍の場合には、準拠法について考慮が必要です。そもそも「朝鮮」籍とは、日本が第二次世界大戦に敗戦することによって、朝鮮半島が日本から解放された際に、当時の日本政府が、朝鮮半島出身者を日本国籍を持ちながら外国人登録をさせる、つまり事実上日本人として取り扱わない、という方針を立てた際に、国籍欄に便宜上「朝鮮」と記載したことが始まりです。

 

 サンフランシスコ条約により、朝鮮半島は正式に独立を回復し、日本政府は、朝鮮半島出身者の日本国籍を喪失させましたが、当時は朝鮮戦争の真っ最中であり、また、日本は韓国との国交も樹立していなかったため、便宜上の記載であった国籍欄の「朝鮮」の記載が続くことになります。その後、韓国や日本の国籍を取得せずに、現在も「朝鮮」籍の方が相当数存在されています。

 

 日本政府は、北朝鮮を国家承認していないため、法律上、「朝鮮」籍は、北朝鮮国籍ではありません。したがって、「朝鮮」籍の方が亡くなられた場合には、亡くなられた方の家族関係、日常生活の状況、本国との交流の状況などを総合的に判断して、韓国と北朝鮮のどちらの民法を適用するのが適切か、個別に判断することになります。

 

 相続という、身近な法律問題についても、日本と朝鮮半島の歴史が複雑に絡んでくるひとつの例だといえます。